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京都地方裁判所 昭和60年(わ)1140号 判決

本籍

京都府八幡市八幡東林三二番地

住居

同市川口別所六一番地 京都八幡病虎内

団体役員

内藤光義

昭和二年五月二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官關本倫敬出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年四月及び罰金一二〇〇万円に処する。

未決勾留日数中二〇日を右懲役刑に算入する。

右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、全日本同和会京都府・市連合会事務局次長であるが、

第一  木下静男、同連合会会長鈴木元動丸、同連合会事務局長長谷部純夫らと共謀のうえ、右木下がその所有する京都市伏見区石田内里町四二番一の山林を昭和五九年五月一五日二億五〇〇万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右木下の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億八、三一四万一、八五〇円、総合課税の総所得(事業所得)金額は三〇万円で、これに対する所得税額は五、二七二万九、四〇〇円であるにもかかわらず、株式会社ワールドが有限会社同和産業から二億五、〇〇〇万円の借入れをし、その債務について右木下が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同年五月三〇日に一億七、〇〇〇万円を履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどして、同六〇年三月一三日、同市伏見区鑓屋町所在所轄伏見税務署において、同署長に対し、右木下の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一、三三六万六、八五〇円、総合課税の総所得金額は三〇万円で、これに対する所得税額は二四六万二、〇〇〇円(ただし、計算誤りにより二四六万一、四〇〇円と記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額五、二七二万九、四〇〇円との差額五、〇二六万七、四〇〇円を免れ

第二  村井幸男、前記鈴木元動丸、同長谷部純夫及び前記連合会辰己支部事務局長村井信秀らと共謀のうえ、右村井幸男がその所有する同区醍醐合場町二八番ほか一筆の田につき同五七年一月一一日代金一億八、二四九万円で売却する契約を締結して同月一六日右代金を受け取り、同五九年七月二七日及び同年八月二日所有権移転登記をしたことから、右売却による譲渡益を五九年分の譲渡所得として申告するに際し、その所得税を免れようと企て、右村井幸男の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億七、一〇七万四、三五〇円、総合課税の総所得(事業所得)金額は損失四九五万一、七二八円で、これに対する所得税額は四、六六八万五、六〇〇円であるにもかかわらず、前記株式会社ワールドが前記有限会社同和産業から二億円の借入れをし、その債務について右村井幸男が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同五七年四月三〇日一億七、五〇〇万円を履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどして、同六〇年三月一八日、前記所轄伏見税務署において、同署長に対し、右村井幸男の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は五八万二、三五〇円で、これに対する所得税額はない旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額四、六六八万五、六〇〇円を免れ

第三  小西英次、前記鈴木元動丸、同長谷部純夫及び同村井信秀らと共謀のうえ、右小西がその所有する京都府長岡京市今里三丁目一一番一ほか五筆の田及び山林を昭和五九年三月二二日から同年一一月一五日までの間に三億三一七万五、〇〇〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右小西の実際の五九年分分離課税の長期譲渡金額は二億七、〇四五万六、二五〇円、総合課税の総所得(配当所得、給与所得)金額は五三万六、〇〇〇円で、これに対する所得税額は八、三七〇万三、〇〇〇円であるにもかかわらず、前記株式会社ワールドが前記有限会社同和産業から三億円の借入れをし、その債務について右小西が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同年一一月二〇日二億四、〇〇〇万円を履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどして、同六〇年一月二二日、京都市右京区西院上花田町一〇番地の一所在所轄右京税務署において、同所長に対し、右小西の五九年分分離課税の長期譲渡所有金額は三、八〇一万六、二五〇円、総合課税の総所得金額は五三万六、〇〇〇円で、これに対する所得税額は七五七万一、五〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額八、三七〇万三、〇〇〇円との差額七、六一三万一、五〇〇円を免れ

第四  安田由紀夫、前記鈴木元動丸、同長谷部純夫、前記連合会元乙訓支部長今井正義及び辻逸朗らと共謀のうえ、右安田がその所有する同市伏見区久我西出町五番一三の田を同五九年一一月二八日一億四、九七六万円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、右安田の実際の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は六、八六七万三、六九一円、総合課税の総所得(給与所得)金額は四六八万一、六七一円で、これに対する所得税額は一、六二二万八、四〇〇円であるにもかかわらず、前記株式会社ワールドが前記有限会社同和産業から八、〇〇〇万円の借入れをし、その債務について右安田が連帯保証人となり、右ワールドが破産したことから右連帯保証債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で同年六月一〇日六、二〇〇万円を履行したが、右ワールドに対する求償不能により同額の損害を被った旨仮装するなどして、同六〇年三月九日、前記所轄伏見税務署において、同署長に対し、右安田の五九年分分離課税の長期譲渡所得金額は六六七万三、九六一円、総合課税の総所得金額は四六八万一、六七一円で、これに対する所得税額は一三三万四、六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額一、六二二万八、四〇〇円との差額一、四八九万三、八〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通(検第九四号ないし第九七号、第一〇三号)

一  長谷部純夫の検察官に対する供述調書謄本(検第一〇六号)

一  大蔵事務官作成の捜査報告書謄本

判示第一及び第二の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書(検第一〇〇号)

判示第一の事実につき

一  木下静男の大蔵事務官に対する質問てん末書謄本(二通)及び検察官に対する供述調書謄本四通(検第一八号、第二〇号ないし第二二号)

一  安東謙(検第一二号)、村井信秀(検第一四号)、長谷部純夫(検第二四号)、鈴木元動丸(検第二五号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  床尾芬(二通)、栗山正廣、藤本康則、木下喜代美の大蔵事務官に対する各質問てん末書謄本

一  大蔵事務官作成の証明書謄本(検第六号)

判示第二の事実につき

一  安東謙(検第三〇号)、須田良蔵、村井ひさみ、村井幸男(六通)、村井信秀(四通、検第四〇ないし第四三号)、長谷部純夫(検第四五号)、鈴木元動丸(検第四六号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  大蔵事務官作成の証明書謄本(検第二九号)

判示第三の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書(検第九八号)

一  松山元、松山忠圀、岩井富代美、村井信秀(四通、検第五四号ないし第五七号)、長谷部純夫(検第五九号)、鈴木元動丸(検第六〇号)、小西英次(三通、検第六二号、第六三号、第六五号)に対する各供述調書謄本

一  大蔵事務官作成の証明書謄本(検第四九号)

判示第四の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書(検第九九号)

一  辻逸朗(六通)、安田由紀夫(五通)、今井正義、鈴木元動丸(検第八〇号)、長谷部純夫(検第八一号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  大蔵事務官作成の証明書謄本(検第六七号)

(法令の適用)

一  罰条

判示各所為につき

刑法六五条一項、六〇条、所得税法二三八条(懲役と罰金を併科)

一  併合罪の処理

刑法四五条前段、四七条本文、四八条二項、一〇条(懲役刑については犯情の最も重い判示第三の罪の刑に加重、罰金刑については判示第一ないし第四の各罪所定の罰金額を合算)

一  未決勾留日数の算入

刑法二一条

一  労役場留置

罰金刑につき刑法一八条

一  執行猶予

懲役刑につき刑法二五条一項

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 大谷正治)

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